〔「自閉症スペクトラム障害」とは〕
「自閉症スペクトラム障害」(ASD:Autism Spectrum Disorder)とは、2013年にアメリカ精神医学会の診断ガイドラインである「精神障害の診断と統計マニュアル(第5版)」(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5)によって命名された診断名です。
DSM-Ⅳ(1994年作成)までは、広汎性発達障害(PDD:Pervasive Developmental Disorder)という中分類の中に、自閉性障害(自閉症)、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害の5つの分類が含まれておりましたが、DSM-5ではこれらを包括する新しい疾患名として、「自閉症スペクトラム障害」(ASD)という単一の診断名をもって再定義されました。
これは、コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を示すといった様々な状態を連続体(スペクトラム)として包含する診断名であって、これにより、自閉症の概念は、従来からの定型的自閉症だけでなく、重度の自閉症から定型発達に近い状態までをも含む、相当広い概念と再構成されました。
〔自閉症スペクトラム障害の特徴〕
その特徴は、DSM-5によれば、「1)対人コミュニケーションと対人的相互反応の欠陥」(社会的コミュニケーションの障害)と「2)行動、関心、活動における限定的で反復的な様式」という2つの中核的な領域の欠陥であるとされます。重症度もこの2点に基づいて判断されます。
〔自閉症スペクトラム障害の診断基準〕
「自閉症スペクトラム障害」(ASD)の診断基準は、DSM-5では、次のようにされています。
A.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があること
B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式
C.症状が発達早期に存在していること
D.その症状が、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしていること
E.これらの障害が、知的能力障害または全般的発達遅延ではうまく説明できないこと
〔ICD-11における扱い〕
なお、2019年に改訂された世界保健機構(WHO)の国際疾病分類第11版(ICD-11:International Classification of Diseases-11)においても、「Autism spectrum disorder」の分類名が使用されておりますが、日本精神神経学会の訳では、「自閉スペクトラム症」と訳されております。
→自閉スペクトラム症
(2020年7月30日)
(2020年8月5日追記)