〔移動支援とは〕

「移動支援」とは、障害者総合支援法に定められた地域生活支援事業という行政サービスの1つで、市町村の裁量に基づいて行われる、障害者等が円滑に外出することができるよう、障害者等の移動を支援する事業のことです(障害者総合支援法5条26項、77条1項8号)。


〔市町村の裁量に委ねられている〕

「移動支援」は、児童福祉法に基づく障害児通所支援(放課後等デイサービス等)や障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(行動援護等)とは異なり、全国一律の基準で実施されるものではなく、その内容は、市町村の裁量に委ねられています。

したがって、「移動支援」の内容は、お住まいの自治体によって、それぞれ異なることになります。

以下では、札幌市における移動支援の内容についてご説明していきます。


〔札幌市のおける移動支援〕
【障害種別ごとの対象要件】

以下の状態にあり、障害によって単独での移動が困難である場合に対象となります。

(全身性障害者・児)

・身体障害者手帳を所持し,肢体不自由の障害程度等級が1級もしくは2級であり、2肢以上に障害を有する場合

(視覚障害者・児)

・身体障害者手帳を所持し、視覚障害の障害程度等級が1級もしくは2級である場合

(知的障害者・児)

・療育手帳を所持している場合

・児童相談所又は知的障害者更生相談所で知的障害との判定を受けた場合

(精神障害者・児)

・精神障害者保健福祉手帳を所持している場合

・精神障害を事由とする年金や特別障害給付金を受給している場合

(難病者・児)

・障害者総合支援法の対象となる難病に罹患している場合

・2肢以上に難病を伴う身体症状がある場合

【行動援護、同行援護よりも対象が広い】

全国一律で実施されている障害福祉サービスの一環である行動援護同行援護に比べ、障害支援区分が一定以上という要件がない分だけ、適用対象となる範囲が広いことになります。

【障害福祉サービスの対象となる場合、原則としてそちらが優先】

全国一律で実施されている障害福祉サービスの対象となる場合、そちらが優先的に適用され、原則として移動支援の対象とはなりません。

すなわち、

・視覚障害の場合、同行援護の対象となる場合、同行援護が優先

・知的障害、精神障害の場合、行動援護の対象となる場合、行動援護が優先

もっとも、例外的に、複数の障害者(児)に対して、ガイドヘルパーが同時に支援を行う場合(グループ支援型といいます)は、上記場合でも移動支援を利用できます。その場合でも、ガイドヘルパーが同時に支援できるのは2人までです。


〔対象となる外出の範囲〕
【社会通念上外出が必要不可欠と認められる場合】

1 医療機関の受診等

2 行政機関の手続に本人が行く必要がある場合

【社会参加促進の観点から、日常生活上外出が必要な場合】

1 文化施設等の利用・・・美術館、映画館等

2 体育施設の利用・・・体育館、プール等

3 観光施設の利用・・・動物園等

4 買い物・・・スーパー、ショッピングモール等

5 理容・美容・・・理容院、美容院

〔対象とならない外出の範囲〕
【経済的活動に係る外出】

・通勤等

【通年かつ長期にわたる外出】

・通学、通所、通園、学童保育への送迎


〔障害を持ったお子さんの親の立場からのポイント〕

以下、障害を持った子どもの親の立場から、ポイントと思われる部分について述べます。

【例外的に通学、通所等に移動支援を利用できる場合】

先ほどご説明したように、通学や、通所等は、原則として移動支援の対象とはなりません。

もっとも、例外的に,お子さんの通学、通所等に移動支援を利用できる場合があります。

① 通学・学童保育への送迎

保護者が、就労、障害、傷病、出産等により送迎できない場合

② 通所

保護者の入院等やむを得ない場合(一時的な利用に限る)

【移動支援は親代わりには使えない】

移動支援の利用には年齢制限はありませんが、同年代の障害をもっていないお子さんが単独で行くことが想定できない場所への移動に移動支援は使えません。

例えば、3歳や5歳のお子さんが、1人で病院やデパートに行くことは通常想定されないので、原則として移動支援の対象とはなりません。

また、年齢による入場制限が設けられている施設(例えば、未就学児が1人では行けないプール等)に連れて行く場合も、原則として移動支援の対象とはなりません。

要するに、本来、障害の有無にかかわらず保護者が連れて行くべき外出について、移動支援の利用はできない、ということです。

もっとも、このような場合であっても、家族も同行するけれども、家族のみでは介助が行えないような場合であれば、移動支援の利用が可能です。

【移動支援に1回あたりの時間、距離の制限はない】

移動支援の1回あたりサービス提供時間に制限はありません。

また、札幌市外に行く場合であっても、移動支援の利用は可能です。

(以上につき、札幌市のトップページから> 健康・福祉・子育て > 福祉・介護 > 障がい福祉 > サービスを利用するみなさまへ > 障害福祉サービス・地域での障がい者支援 > 移動支援事業について、で行ける「札幌市移動支援事業『移動支援ガイドライン(平成30年4月)』」を参考にしました。)


〔利用にあたって〕

利用に当たっては、札幌市からi移動支援の支給決定を受ける必要があります。

札幌市の場合、事業所の空き情報等が検索できる「元気さーち」(外部リンク)というサイトがありますので、参考になるかと思います。

(2020年10月22日)

(2020年10月23日修正)