〔動きのまねが苦手、手や足の動きがぎこちない〕

自閉症や発達障害のお子さんは、動きのまねが苦手だったり、手や足の動きがぎこちないことが、比較的よくあるとされています。

haruくんも、昔は、服のボタンを留めたり、チャックを締めたりするのが苦手でした。

また、昔ははしごを上ることも下りることも苦手で、今では両方とも出来るようになりましたが、一時期、上ることは出来るのですが、下りることが苦手、という時期がありました。

上るときにはサッと上れるのですが、下りるとなると、階段を降りるのと同じように、体の向きを前後逆に変えて下りようとする時期が一定期間あり、その時期は、公園に連れて行くときにも、遊具から下りられないところまで登ってしまわないか、ずいぶん気をつかったことを覚えています。


〔医師の立場から〕

医師の平岩幹男さんは、その著書の「自閉症スペクトラム障害」で次のように述べています。

「発達協調性運動障害(DCD:Developmental Coordinetion Disorder)もASD(自閉症スペクトラム障害)ではしばしば見られる症状の一つです。

たとえば、ボールを投げる、自転車に乗る、縄跳びをするなどの場合には、目、手、足を同時に動かすことが必要出るが、それぞれはきちんと動かせても、同時に動かす協調運動は苦手ということがあります。手足の動きのぎこちなさとして目立つこともあります。

一般的には5~7歳ころが一番目立ちやすく、10歳を過ぎると目立たなくなってくることが多いようです。小学校高学年では跳び箱などの器械体操が入ってきますので、苦手になることが多いようです。

これらができるようになるためには、体幹バランスを良くすることとあわせて、段階を細かく分けて、少しずつ出来るようにしていくことが必要です。」

また、同じく医師の本田秀夫さんは、その著書の「自閉症スペクトラム」で次のように述べています。

「自閉症スペクトラムの人たちの一部に、運動機能の異常が見られます。運動全般が苦手な人もいますが、部分的に苦手という場合もあります。

運動機能は、身体全体を動かす『粗大運動』と、手先など一部を用いる『微細運動』とに大別されます。粗大運動にも、歩く、走る、泳ぐなど、主として身体の協調運動のみで行うものや、ボールを投げる、蹴る、バットを振るなど、道具を用いるものなど、いろいろな種類があります。

微細運動も同様に、字を書く、絵を描く、物をつまむ、箸を使うなど、さまざまです。

自閉症スペクトラムの人たちの中には、これらのたくさんの種類の運動機能の一部が、とても不器用な人がいます。ただし、運動がとても得意な人や、細かい作業をきわめて精緻な技術で行える人もいるため、運動の不器用さは自閉症スペクトラムの診断基準とはなりません。」


〔当事者の立場から〕

当事者の目線から言うと、自閉症当事者の東田直樹さんは、その著書の「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」で次のように述べています。

「体操やダンスなども、どんなに簡単な振り付けもできませんでした。

それは、真似をすることが難しかったからです。とにかく自分の体の部分がよく分かっていないので、自分の目で見て確かめられる部分を動かすことが、僕たちの最初にできる模倣なのです。」

「手足がいつもどうなっているのかが、僕にはよく分かりません。僕にとっては、手も足もどこからついているのか、どうやったら自分の思い通りに動くのか、まるで人魚の足のように実感のないものなのです。」

harusoraも、haruくんの動きについて心配していましたが、最近では、どんどん出来るようになってきました。

はしごを下りられるようになったときのように、出来なかった動きができるようになったときの、haruくんの達成感に満ちた笑顔はとても素敵です。

(2020年12月16日)