〔診断基準の変更〕
以前の診断基準であったDSM-Ⅳにおいては、自閉性障害(自閉症)とADHDとは併存が認められていませんでした。広汎性発達障害(自閉症(自閉性障害)、アスペルガー障害等5つの分類が含まれます。)に該当する場合、そちらの診断名がつけられ、ADHDの診断基準として、広汎性発達障害と診断できる場合にはADHDとは診断しないとされていたからです。
ところが、現在のDSMー5においては、DSM-Ⅳでは認められていなかったADHDと自閉症(自閉症スペクトラム障害)の併存が認められました。
〔実際の区別の困難性〕
概念的には、自閉症スペクトラムは社会的(対人的)関係と限定された興味と活動(こだわり)の問題であるのに対し、ADHDは注意の欠如と多動性、衝動性、不注意性の問題なので、まったく別の問題です。
ただ、実際問題としては、自閉症スペクトラムの子どもを見て、ADHDを併存しているかどうかの判断は難しいところです。
自閉症スペクトラムの子どもを集団活動に参加させると、対人関係に興味が無いためにどこかに行ってしまう、ということがよくあるため、ADHDによる多動との区別が困難だからです。また、その場での活動に全く興味が持てないとき、自閉症スペクトラムの子どもは極めて集中力が無くなります。これもADHDによる不注意との区別が困難です。
〔どのように区別するか〕
区別をどのようにするかと言うと、興味のある活動の場合の集中力です。
興味の無い活動のときは多動で注意散漫であっても、興味のある活動を行うときは集中力があるという場合は、ADHDではなく自閉症スペクトラムだと判断できます。逆に、興味のある活動を行うときでも注意散漫であるようであれば、ADHDを併存していると考えることができます。
もっとも、ADHDを併存している場合、こだわりの特徴が弱くなる傾向があるようですので、併存しているからより困難だとも言い切れず、一長一短とも言えるところです。
(2020年8月22日)