「知的障害」と「発達障害」の関係について、まったく別の概念と捉えるか、一方が他方を包含する概念と捉えるかは、それぞれの概念の範囲をどのように理解するかによって変わり得るものであって、絶対の正解というものは存在しませんが、2020年段階において、一般的にどのように理解されているかについて、以下に述べたいと思います。
【医学上の「知的障害」と「発達障害」の関係】
医学上は、「知的障害」は「発達障害」の一類型として位置づけるのが、一般的なようです。
〔厚生労働省の見解〕
厚生労働省のウェブサイト(外部リンク)では、知的障害は、「論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校や経験での学習のように全般的な精神機能の支障によって特徴づけられる発達障害の一つです。」とされています。
〔DSM-5の分類〕
DSM-5においては、「Neurodevelopmental disorders 神経発達症群/神経発達障害群」の下位分類として、自閉症スペクトラム障害やADHDと並んで、「Intellectual Disabilities 知的能力障害群」が挙げられています。
〔ICD-11の分類〕
ICDー11においては、「Neurodevelopmental disorders 神経発達症群」の下位分類として、自閉スペクトラム症やADHDと並んで、「 Disorders of intellectual development 知的発達症」(日本語訳については、日本精神神経学会の訳によります。)が挙げられており、日本語訳上も、発達障害の1つであることが、より明確になっています。
【法律上の「知的障害」と「発達障害」の関係】
他方、法律上は、以下のような法律の規定により、「知的障害」と「発達障害」は別の概念として扱われていると言えます。
〔障害者基本法〕
障害者基本法においては、「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しており(障害者基本法2条1項)、「知的障害」と「発達障害」は別の概念として扱われています。
〔障害者総合支援法及び知的障害者福祉法〕
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)は、その4条1項で「障害者」を定義している4条1項において「・・・精神障害者(発達障害者支援法第二条第二項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。)・・・」としており、ここでも「知的障害」と「発達障害」は別の概念として扱われています。
〔2020年8月17日)