〔障害を持ったお子さんの就学先〕
障害を持ったお子さんが小学校・中学校に就学する際、その就学先は障害の程度に応じて4種類あります。
1 小学校・中学校の「通常学級」(いわゆる「通常級」)
2 通常の学級に在籍しながらの「通級による指導」(いわゆる「通級指導」)(学校教育法81条1項、学校教育法施行規則140条、141条)
3 通常の小学校・中学校の「特別支援『学級』」(いわゆる「支援級」)(学校教育法81条2項)
4 「特別支援『学校』」(いわゆる「支援校」)(学校教育法72条)
1の「通常学級」が一番障害の程度が軽い区分で、下に行くに従って障害の程度が重い区分となり、4の「特別支援学校」が障害の程度が一番重い区分となります。
なお、知的障害については2の「通級指導」が認められていないため、「1 通常学級」、「3 特別支援学級」、「4 特別支援学校」の3段階となります。
〔就学先の決定方法〕
障害の有無に関わらず、お子さんの就学先は、市町村の教育委員会が決定したうえで、保護者に対して通知するという形をとります(学校教育法施行例5条、14条)。
【障害者基本法16条】
そして、子どもの教育について、障害者基本法16条は次のように定めています。
「1 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
整理すると、障害者基本法16条は、次のことを定めている条文です。
1 まず、障害者がその「能力」と「特性」に応じた教育が受けられるようにする。
2 その際、可能な限り障害を持ったお子さんが障害を持たないお子さんと共に教育を受けられるように配慮する。
3 前記1と2の実現のため、可能な限りお子さんと保護者さんの意向を尊重することが義務づけられる。
【障害者基本法16条の具体化】
障害者基本法16条の考え方を具体化すると、以下のようになります。
1 基本的には、お子さんの障害の程度に応じて、就学先は判断される「能力」と「特性」に応じた教育)
2 各段階のどちらにするか、どちらもあり得る場合(例えば、「2 通級による指導」と「3 特別支援学級」のどちらにするかのボーダーラインにいる場合)、障害の程度が軽い方の就学区分とする(可能な限り共に教育を受けられるように配慮)
3 1や2で判断された就学先にするかどうか、可能な限りお子さんと保護者さんの意向を尊重しなければならない
例えば、教育委員会が就学先として「4 特別支援学校」が適当だと判断しても、保護者さんが通常の学校における就学を望めば、「3 特別支援学級」を就学先としなければなりませんし、逆に、教育委員会が「3 特別支援学級」での就学が可能だと判断しても、保護者さんが、無理をさせるよりも「4 特別支援学校」による就学の方を望めば、そうしなければなりません(障害者基本法16条2項は「その意向を尊重しなければならない」と、行政に義務づけているからです。)
他方、同条項で義務づけられているのは「可能な限り」の意向尊重にとどまりますので、障害の程度に応じて適当だと判断された就学先が「4 特別支援学校」であった場合、たとえ保護者さんが「1 通常学級」での就学を望んだとしても、おそらくはそこまでは認められないこととなります。
概ね、障害の程度に応じて判断された就学先をベースにお子さんや保護者さんの意向に応じて、上下1ランクずつ変動させうるというイメージです。
〔手帳の有無は無関係〕
なお、就学先の判断は、教育委員会が独自に行いますので、障害者手帳の有無や療育手帳の有無は関係ありません。
→「通級による指導」の対象となる障害の内容及びその程度
→「特別支援学級」による指導の対象となる障害の内容及びその程度
→「特別支援学校」による指導の対象となる障害の内容及びその程度
(2021年1月20日)