「発達障害」という言葉には医学用語としての意味と、法律用語としての意味があり、以下では、それぞれについて説明します。


【医学用語としての「発達障害」】

発達障害は、海外から導入された概念で、英語では、developmental disability (略称:DD) といいます。

特に定まった定義はないようですが、平岩幹男医師は、著書の「自閉症スペクトラム障害」において概念的な定義として、「発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で、現在では根本的な治療はないけれども、適切な対応をすることによって社会生活上の困難は軽減される障害」と位置づけています。

 

世界保健機構(WHO)の国際疾病分類(ICD:International Classification of Diseases)のうち、ICD-10(1990年発表)においては、第5章「精神と行動の障害」のなかの、「F80-90 心理的発達の障害」「F90-98 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」を含む概念であり、ICDー11(2018年発表)においては、「Neurodevelopmental disorders 神経発達症群」が発達障害に相当します。

また、アメリカ精神医学会の診断ガイドラインである「精神障害の診断と統計マニュアル(第5版)」(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5)(2013年発表)においては、「Neurodevelopmental disorders 神経発達症群/神経発達障害群」が発達障害に相当します。


〔ICD-11の分類〕

ICD-11の「Neurodevelopmental disorders 神経発達症群」には、次の10分類が分類として含まれます(その下にさらに小分類が存在するものもあります)。

1 Disorders of intellectual development 知的発達症

2 Developmental speech or language disorders 発達性発話または言語症群

3 Autism spectrum disorder 自閉スペクトラム症

4 Developmental learning disorder 発達性学習症

5 Developmental motor coordination disorder 発達性協調運動症

6 Primary tics or tic disorders 一次性チックまたはチック症群

7 Attention deficit hyperactivity disorder 注意欠如多動症

8 Stereotyped movement disorder 常同運動症

9 Other specified neurodevelopmental disorders 神経発達症、他の特定される

10 Neurodevelopmental disorders, unspecified 神経発達症、特定不能


〔DSM-5の分類〕

DSM-5の「Neurodevelopmental disorders 神経発達症群/神経発達障害群」には、次の7分類が分類として含まれます(その下にさらに小分類が存在するものもあります)

1 Intellectual Disabilities  知的能力障害群

2 Communication Disorders  コミュニケーション障害群

3 Autism Spectrum Disorder 自閉症スペクトラム障害

4 Attention-Dificit/Hyperadtivity Disorder 注意欠如・多動性障害

5 Specific Ledrning Disorder 限局性学習障害

6 Motor Disorders 運動障害群

7 Other Neurodevelopmental disorders 他の神経発達障害群


【法律用語としての「発達障害」】

〔発達障害者支援法〕

法律上は、発達障害者支援法(2005年4月1日施行)に定義規程があります。

「発達障害」とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されます(発達障害者支援法2条1項)。

なお、同法において、「発達障害者」とは、「発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの」をいい、「発達障害児」とは、「発達障害者のうち18歳未満のものをいう」とされます(同条2項)。

また、「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいうとされます(同条3項)。


〔障害者基本法〕

また、障害者基本法においては、「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しており(障害者基本法2条1項)、発達障害を精神障害に含めております。

「知的障害」と「発達障害」の関係

(2020年8月5日)

(2020年8月12日追記)

(2021年5月5日追記)