ADHDとは、「Attention-Defecit Hyperactivity Disorder」の頭文字を取った略称です。
従来、「注意欠陥・多動性障害」と訳されてきましたが、DSM-5の日本語訳版では「注意欠如・多動性障害」と「注意欠如・多動症」とが併記されています。「注意『欠陥』」というか、「注意『欠如』」というかの違いですね。
発達障害の1つとされています。
〔行政上の定義〕
文部科学省によれば、「ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」とされています。
(出典:文部科学省ウェブサイト「トップ > 教育 > 特別支援教育 > 特別支援教育について > 4.それぞれの障害に配慮した教育 > (8)LD、ADHDの教育 > 主な発達障害」〔外部ページ〕)
〔ADHDの原因〕
現時点ではADHDの原因が完全に解明されたわけではないようですが、医学上、一般的には、ADHDは脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンなどが不足したり神経伝達に異常が生じることによって、衝動性、多動性、不注意性などの諸症状が起きるとされています。
〔ADHDの診断基準〕
DSM-5によれば、ADHDの診断基準は、次のとおりです。
A (1)および(または)(2)によって特徴づけられる、不注意および(または)多動性-衝動性の特徴的な様式で、機能又は発達の妨げとなっているもの
(1)不注意
以下の症状のうち6つ以上が少なくとも6ヶ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的、学業的、職業的活動に直接悪影響を及ぼすほどであること。
(a)学業中、仕事中等に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする。
(b)課題又は遊びの活動中に、しばしば注意を継続することが困難である。
(c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える。
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない。
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
(f)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、いやいや行う
(g)課題や活動に必要なものをしばしば無くしてしまう。
(h)しばしば外的な刺激によってすぐ気が散ってしまう。
(i)しばしば日々の活動で忘れっぽい。
(2)多動性及び衝動性
以下の症状のうち6つ以上が少なくとも6ヶ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的、学業的、職業的活動に直接悪影響を及ぼすほどであること。
(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする。
(b)席についていることが求められている場面でしばしば席を離れる。
(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高いところに登ったりする。
(d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。
(e)しばしばじっとしていない、または、まるでエンジンで動かされているかのように行動する。
(f)しばしばしゃべりすぎる。
(g)しばしば質問が終わる前に答え始めてしまう。
(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である。
(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する。
B 不注意または多動性-衝動性の症状のうち、いくつかが12歳になる前から存在していた。
C 不注意または多動性-衝動性の症状のうち、いくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場、友人や親戚といるとき等)において存在する。
D これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させている。
E その症状は、統合失調症等の他の精神疾患では上手く説明されない。
(*DSM-5による変更点)
DSM-ⅣからDSMー5に改訂されるにあたり、発症年齢の記述が「7歳以前」から「12歳になる前から」に変更されました。また、自閉症スペクトラム障害と併存する診断とすることが認められました。
〔ADHDの有病率〕
DSM-5によれば、子どもの約5%および成人の約2.5%にADHDが生じるとされています。
→ADHDと知的障害は併存するか
→ADHDの二次障害と合併障害
→自閉症とADHDの併存
→ADHDの投薬治療
(2020年8月18日)
(2020年9月2日誤記修正)
〔20201年1月5日加筆)