「発達が気になる子の『ステキ』を伸ばすかかわり方」(加藤潔)(明石書店)

「発達が気になる子の『ステキ』を伸ばすかかわり方」

著者-加藤潔   出版-明石書店   発行年-2015年

ページ数-158頁 定価-1600円+税

著者の加藤潔氏は、札幌市及び石狩市内で自閉症・知的障害をはじめとした発達障害児・者のための事業所を複数運営している「社会福祉法人はるにれの里」の「札幌市自閉症者自立支援センターゆい」の所長さん(当時)です。経歴を拝見すると、小学校の教員、養護学校の教員からはじまり、発達障害児の支援の現場をずっと歩んで来られた方のようです。

本書では、そんな加藤さんが、発達が気になる子の親御さんの悩み、疑問に対し、平易な言葉で簡潔に説明をしてくれます。

例えば、「ダメ」「やめなさい」と何度言っても同じことを繰り返してしまう子については、「ダメ」「やめなさい」と言われたことは伝わっていて、その場では、その行動自体は一時止まるけれども、その代わりに「何をすれば良いのか」が分かっていないので、行動自体の改善に繋がらないをいう説明には、なるほど、そうか、と思わされました。

そして、その改善方法としては、どういう行動をとると良いのか、まで伝えれば良いと教えてくれています。そして、その伝え方も、できれば「○○しなさい」よりも「○○してくれると嬉しいです」等の伝え方の方が良い、と伝え方まで教えてくれます。

また、「オバケのQ太郎」に出てくる、Q太郎の弟のO次郎を引き合いに、O次郎は「バケラッタ」しか言わないけれど、それでQ太郎をはじめとして周りの登場人物が言いたいことを理解してくれるので、周りとの関係においてそこに障害はないことを指摘した上で、「障がいは個人の中にではなく、あくまでも関係性の中にのみ存在するものだ」と解き明かします。

これは、まさに障害を個人の問題ではなく、社会とのかかわりにおける社会的障壁の問題と捉える障害の社会モデルの考え方ですが、それをここまでわかりやすく説明してくれる本はなかなかないと感じました。

(2020年9月20日)

 

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