「発達が気になる子のステキを伸ばす『ことばがけ』」(加藤潔)(明石書店)

「発達が気になる子のステキを伸ばす『ことばがけ』」

著者-加藤潔   出版-明石書店   発行年-2017年

ページ数-158頁 定価-1600円+税

著者の加藤潔氏は、札幌市及び石狩市内で自閉症・知的障害をはじめとした発達障害児・者のための事業所を複数運営している「社会福祉法人はるにれの里」の「札幌市自閉症者自立支援センターゆい」の所長さん(当時)です。経歴を拝見すると、小学校の教員、養護学校の教員からはじまり、発達障害児の支援の現場をずっと歩んで来られた方のようです。

本書では、そんな加藤さんが、発達が気になるお子さんへの「ことばがけ」の方法について解説してくれます。

もっとも、本書でいう「ことばがけ」とは、話し言葉で声がけをするという通常の意味での「ことばがけ」ではなく、ジェスチャー、絵カード、サイン、書き言葉など、幅広く人にメッセージを伝えるためのコミュニケーションの総称という意味で使用されていますので、その点には注意が必要です。

本書は全5章で構成されており、第1章で「指示や説明のことばがけ」、第2章で「元気にすることばがけ」、第3章で「マイナスにしないことばがけ」、第4章で「ことばを引き出すことばがけ」を、それぞれ、冒頭で原則を整理した上で、分かりやすく示してくれています。

例えば、第1章では、指示や説明のことばかけの原則として「結論から示す」「1回にひとつ」など、第2章では元気にすることばがけとして、「ほめ方の7つのポイント」などを示してくれます。

harusoraが印象に残ったのは、視覚優位の発達障害の子どもには、目で見て分かりやすい方法(例えば、絵カード等)で示す、というのは、最近では比較的広がってきている知識ですが、そこから更に一歩進んで、「色つきの絵」「文字」「線画」「写真」のどの情報が一番入りやすいかにも個人差がある、という話には、なるほど、と思いました。

さすが長年支援の第一線で携わってきた人だからわかることですね。

第5章は「支援する立場にある自分へのことばがけ」となっていて、他の章とは少し毛色が異なりますが、「20回に1回うまくいったら上出来。自分の実力はその程度、それでいい。そのかわり、19回はけっしてあきらめない。試行錯誤は繰り返す。」という言葉や、「支援が成功するかどうかの90%は準備で決まる。うまくいかないこともたくさんあるが、うまくいくための最善の努力をしないかぎり、うまくいくはずがない。」「支援の最中にあたふたするのではなく、支援前の準備にあたふたする支援者であるべき」という言葉には、親としても、また、職業人としても、刺さるものがありました。

(2020年9月26日)