「施設を出て町に暮らす」(北海道立太陽の園・伊達市立旭寮編)(ぶどう社)

「施設を出て町に暮らす ~知的障害をもつ人たちの地域生活援助の実際~ 」

編者-北海道立太陽の園・伊達市立旭寮  出版-ぶどう社 発行年-1993年

ページ数-167頁 定価-1553円+税

「施設を出て町で暮らす」、「ノーマライゼーション」、口で言うのは簡単ですが、実際に行うのは難しいことです。

「子どもを親から預かっている」という考え方から、あくまでも利用者は「本人」であるという原点に立ち返り、「本人中心の援助」という考え方に立つ。

そのうえで、リスクを伴う選択に対する家族の不安に寄り添い、「地域で普通に暮らしたいという本人の願い」と「施設から出ることへの家族の不安」を統一的に解決できるような対策を取ること。

それは、一つには、施設から出て「自立」したらおしまい、ということではなく、「生涯にわたる援助」を第1のテーマとすること。

そして、本人の自立への意欲を阻害しないように、「自立への挑戦」を第2のテーマとすること。

また、地域の人たちに障害を持つ人たちを理解してもらい、共に生きるための方法を学んでもらう「市民生活の保障」を第3のテーマとし、「福祉ネットワークの構築」を第4のテーマとすること。

本書で語られていることは、現在「意思決定支援」という言葉で語られていることと、根底にある考え方で共通しています。

そして、それが1968年の太陽の園開所時という、今から50年以上前から実践されてきたということが素晴らしいことです。

本書では、発語がまったくない人が、18年間の施設生活ののち、地域での生活をはじめた例も紹介されています。

本書の舞台となった北海道伊達市では、1993年当時で人口3万5000人余りの中で、200人以上の知的障害者が、町中の寮やグループホーム、アパートで暮らしています。

ノーマライゼーションへの可能性を感じさせてくれる本でした。

(2020年9月12日)

 

 

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