「「発達障害」だけで子どもを見ないで その子の「不可解」を理解する」(田中康雄)(SB新書)

「「発達障害」だけで子どもを見ないで その子の「不可解」を理解する」

著者-田中康男  出版-SB新書  発行年-2019年

ページ数-239頁 定価-850円+税

著者の田中康男氏は児童精神科医・臨床心理士で、北海道大学名誉教授(2019年段階)。

本書は2部構成となっており、第1部で乳児期から思春期にかけての12の架空事例をもとに、筆者が考える対応を述べ、第2部で医療の役割について述べています。分量的には第1部が200頁程度、第2部が40頁程度です。

第1部の事例対応では、一貫して、まず、医師のもとに訪れるまでの親の苦悩に寄り添う姿勢を示し、次に、問題行動とされる子どもの行動について、子どもの目線にたって解きほぐしていきます。

ポイントとなるところは太字で書いてあり、マーカーも引いてあるので読みやすく、発達障害のお子さんをもつママやパパは気持ちが少し軽くなるような内容です。

第2部では、「どのような診断がつくか」と急ぐよりも1人ひとりの思いや周囲との関係性に思いを馳せ、今できる生活の応援を考えるという田中氏の医師としてのスタンスが示したうえで、診断名がつくことにより、周囲が子どもを理解するうえでの共通認識が持てるというプラス面があるけれども、診断名がつくことによって子どもの捉え方が画一的になってしまうというマイナス面があるなど、診断名を付けることのプラス面やマイナス面が示されています。

特に、診断名を出すことにより、それまでユニークで素敵だと思っていた我が子の行動が症状なんだと思ってしまうとか、診断名を出した瞬間に「この子に近づく」というよりも「その名称のことを学ぼう」というふうになってしまうこともある、という指摘には、改めて、考えさせられる部分がありました。

(2021年7月1日)

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