「我、自閉症に生まれて」(テンプル・グランディン&マーガレットMスカリアノ著・カニングハム久子訳)(学習研究社)

「我、自閉症に生まれて」

著者-テンプル・グランディン&マーガレットMスカリアノ 訳者-カニングハム久子

出版-学習研究社   発行年-1994年

ページ数-268頁 定価-2400円+税

自閉症当事者であるテンプル・グランディン氏の自伝的小説。

著者は1947年生まれで1950年に自閉症との診断を受け、いろいろ困難に直面するも、高校時代に出会ったカーロック先生の導きもあり、学者の道に進み(動物科学分野)、コロラド州立大学助教授となります。

グランディンさんが幼児期の記憶として語っているものには、乳児のころ、抱っこを嫌がったり、親が話をする際に目を見るように言っても見ることができなかったり、くるくる回るのが好きだったり、読んでいて、まさに幼少期のharuくんと同じだ!と驚きました。

その後、彼女は高校に入り、恩師と言うべきカーロック先生と出会って、その導きもあり、自分の自閉症と折り合いを付けながら学者の道に進みます。おそらく、自閉症者特有の「こだわり」を良い方向に活かせたのだと思います。

彼女は、自伝の最後をこう締めています。「治療計画の最も重要な構成因子は、自閉症児に働きかける、愛にあふれた人々が存在していることである。私は、私のことを十分に心にかけ、私に働きかけてくれた母、アン叔母、ウィリアム・カーロック先生がいてくれたために、自閉症を克服できたのである。」

harusoraもharuくんの未来を信じて見守っていきたいと思いますし、少年期・青年期に良い出会いがあることを祈っております。

(追記)
 
同じくテンプル・グランディン氏の著書である「自閉症の才能開発」の序文で、神経学者のオリヴァー・サックス氏(ロバート・デニーロとロビン・ウィリアムズ出演で映画化された「レナードの朝」の原作者)が、本書について触れられているので引用させて頂きます。
 
「この著書は、自閉症者自身による、”内面生活の言語化”がそれ以前にはなかったために、画期的前例となった。
 40年以上もの間、自閉症者には”奥深さ”や精神活動はない、あったとしても表現できる能力は絶対にないというのが、医学界のドグマであったために、およそ想像もつかない出版物であった。
 この本の内容は、まったく率直で(そして不思議なほど)分かりやすい。
 テンプル・グランディンの発言は、発言という行為のなかった、いや、かつてあることさえ認められていなかった世界から、ほとばしったものである。
・・・(中略)・・それは正に啓示ともいうべきものであった。」
 

(2020年8月12日)

〔2020年9月5日追記)